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トカラ文芸

トカラ列島平島(稲垣涼氏撮影)

南島学ヱレキ版

『南島学』発刊の辞

ここに発刊する雑誌『南島学』の使命とは、我々が生きる歴史の「現在」を捉えることである。現在とは日々の報道や巷の流行りといった不毛な表層ではない。のっぺりとした日常の下には、無数の諸力がせめぎあう歴史の臨界点/未来の創造点が存在する。来るべき時代を構想するための総合的探査計画のため、我々は歴史の地層ふかく探針を下ろす。

しかし、すでに「歴史」や「現在」と名付けられたものを追いかけていても、静止した「歴史」や誰かが仕掛けた「現在」を事後的に見いだすだけだ。本誌は、過去を単に過去として懐古的に自閉する態度も、反対に同時代性だけを追い求める刹那的な態度も共に断固拒絶する。

『南島学』の「南島」は、現実の地理を指す以上に、我々の計画の遂行に当たって展開されるべき、あらゆる方向に開かれた場(フィールド)なのである。問題関心も様々な人々が、様々な時代や場所の欠片にそれぞれのやり方で観測面を交差させること、そして、それらを今という時においてある一定の布置へと編集すること――過去の空虚な反復を防ぎ、歴史の一回きりの生成の瞬間を言葉という普遍化された媒体へと接続するためには、他に道はない。

我々が真の意味で「現在」を捉えることに成功するのか否かについては歴史の判定を待ちたい。願わくば、本誌が今・ここを生きる人々をつなぐ一瞬の結社とならんことを。

 

●執筆者のプロフィールはこちらから。

南島学ヱレキ版 第10号目次

南島学ヱレキ版

バックナンバー

*論文

風が吹くように(デンマーク電気博物館、橋爪健郎訳)
「風が吹くように」と題されたデンマーク電気博物館の資料の一部訳。
20世紀初頭に活躍したデンマーク風車中興の祖、ポール・ラ・クールを皮切りに、第二次世界大戦中のエネルギー不足、戦後の実験風車、そしてオイルショックと1968年を経験した世代による現代デンマーク風車産業の勃興まで、デンマーク風車の100年史をコンパクトに理解できる。

これまでの連載

*デンマーク民衆のチャレンジ(橋爪健郎 訳)

現在世界に冠たる一大産業にまで発展しているデンマーク風車発電。しかし、その草創期から現在までの歴史を紐解けば、まさに草の根の人々の努力によって作られてきたことがわかります。日本ではあまり知られていないデンマーク風車の歴史を、貴重な原資料の一部訳で紹介します。

第01回  民衆が育てた風車(1)(プレーベン・メゴール)
第02回  民衆が育てた風車(2)(プレーベン・メゴール)
第03回  民衆が育てた風車(3)(プレーベン・メゴール)
第04回  ツヴィンドミルを造った人々(イベン・オスターゴール)
第05回  風車翼にかけた人生(エリック・グローヴ・ニールセン)
第06回  風車発電産業の発展(1)(ビルガー・マッドセン)
第07回  風車発電産業の発展(2)(ビルガー・マッドセン)
第08回  ハーボルクの鍛冶屋からヴェスタス社へ(ヘンリック・スティスダル)
第09回  ノルドタンク社の歴史(トーキルド・ロールベック)
第10回  ダンレーンからボーナスへ(エゴン・クリスチャンセン)
第11回  リソー風車試験所の前史(1)(エゴン・ベネゴー)
第12回  リソー風車試験所の前史(2)(エゴン・ベネゴー)
第13回  風車オーナーの組織(イベン・オスターゴー、アスビヨン・ビエール)
第14回  統計から見た風車の歴史(パー・ニールセン)
第15回  ラ・クールの伝統を引き継いで(プレーベン・メゴール)
第16回  海上風車の歴史(ヨアン・レミング)
第17回  最初の海上風車協同組合としてのミデルグルンデン(イエンス・ラーセン)
第18回  21世紀に入る現在の状況(ビルガー・マッセン)
*トカラ文芸(稲垣尚友)

2003年の「埋み火」以降、フィクション・ノンフィクションを越境した創作活動を続けている稲垣尚友の文芸新作です。トカラだけでなくカゴ屋仕事の中での体験も元にしつつ、変わらぬ地面からの視線で現代日本を見上げた記録をお楽しみ下さい。

第01回  かたくなな掛け金
第02回  選民
第03回  地もどり
第04回  オシマバ(1) (2)
第05回  乗り物は遅いほどありがたい
第06回  豊肥本線逆走事件
第07回  母よ、私の荷車を・・・
第08回  水が転がっている
第09回  タンク落札
第10回  義男が喜び、幸子が見守る
第11回  タクシードライバー
第12回  東シナ海の森
第13回  独りカーニバル(1) (2) (3)
第14回  額縁
第15回  渡り合って初めて知る
第16回  錆びの記憶
第17回  茶封筒の中の宮本常一先生
第18回  野娘幻想(1) 野娘幻想(2)
*地誌(橋爪太作)

知らない土地へ行く(あるいは知っている土地でも知らないフリをしながら歩く)というのは、とてもわくわくする体験です。このシリーズは、旅した土地の「精神地理」を文章としたものです。

第01回  鹿児島県鹿児島市明和団地
第02回  鹿児島県鹿児島郡十島村平島(内容は「籠屋新聞海賊版」と同じです)
第03回  鹿児島県鹿児島郡十島村中之島
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